スタートアップ・ベンチャー向け

スタートアップやベンチャーの事業計画のお話をする前に、実態のお話をしようと思います。

中小企業白書2017の109ページに、起業後の企業生存率の国際比較が掲載されています。これによると、日本において創業1年後は95.3%、創業2年後は91.5%、創業3年後は88.1%、創業4年後は84.8%、創業5年後は81.7%の企業が残っているというデータが出ています。これだけを見ると、起業して生き残るって簡単だ!と思いがちなのですが…この統計に関しては注意点があります。日本に関するこのデータは、「帝国データバンクの企業概要ファイル」が用いられているため、小規模事業者は含まれていない上に、注意書きに「日本の企業生存率はデータベースに企業情報が収録されている企業のみで集計している。また、データベース収録までに一定の時間 を要するため、実際の生存率よりも高めに算出されている可能性がある。」と書かれています。すなわち、起業はそんなに甘くないということです。

それがわかる、創業に近い企業のデータが中小企業白書2006に掲載されています。中小企業白書2006第1部第2節第1-2-21図では、製造業の4人以上の事業所について開業年次別・事業所の経過年数別生存率のデータが公表されています。

企業生存率は、事業所の開業後経過年ごとに前年の事業者数を100として次年に存続している事業所の割合を示したものなので、例えば、3年後の生存率=1 × 1年次の生存率 × 2年次の生存率 × 3年次の生存率で求めることができます。上記の第1-2-21図から企業生存率を計算すると以下のとおりになります。

スクロールしてご覧ください。

  1年後 2年後 3年後 4年後 5年後 6年後 7年後 8年後 9年後 10年後
個人 62.3% 47.3% 37.6% 30.5% 25.6% 21.4% 18.2% 15.6% 13.4% 11.6%
法人 79.6% 69.7% 62.8% 57.1% 52.7% 48.7% 45.1% 41.7% 38.6% 35.9%
全事業所 72.8% 60.9% 52.8% 46.5% 41.8% 37.7% 34.3% 31.2% 28.4% 26.1%

帝国データバンクが対象としている企業の5年後の生存率の半分程度という衝撃的な結果ですね。上記の表も必ずしもベンチャー・スタートアップを適切に反映しているとはいえませんが、より創業時の実態に近いのではないかと考えています。

創業して勝ち抜いていくためにどうしていかなければならないのか?それを考えるのがベンチャー・スタートアップ向けの事業計画書となります。

しかし、

  • そもそも事業計画書の基本がわからない
  • 創業時の事業計画書って何をどのように書いたらよいのかわからない
  • そもそもお金を借りるわけでもないのに事業計画書なんて必要なのかわからない

という悩みを抱える方もいらっしゃるかもしれません。融資を受けたい方は融資向けの事業計画書の項目をご覧ください。

ここではスタートアップやベンチャーの方が事業をきちんと継続していくための事業計画書、つまり創業者の頭の整理のための事業計画書についてお話します。

事業計画書は、作成する目的、そしてそれを読む人にあわせて作る必要があります。つまり、同じ会社の事業計画書でも、例えば融資向けのものと経営者の頭の整理のものとでは記載内容も記載方法も異なるのです。

インターネットや書籍で事業計画書の書き方を調べると出てくるものの大半が「融資向け」のものです。このフォーマットは、ある程度頭の整理に役立ちますが、十分とはいえません。なぜなら融資向けの事業計画書は、企業が借入をして、それをどのように返済していくのか、実際に返済していけるのかということが中心となっていますが、経営者の頭の整理の場合には、もっと広い視点で考えていかないといけないからです。

スタートアップ・ベンチャー向け事業計画書のポイントは以下のとおりです。

1.理念やビジョンの明確化

経営者の頭の整理ですので、起業してどういう姿を目指すのかを明確化しておく必要があります。それは経営判断に迷ったときにどういう判断・行動をすべきかを決める指針となるからです。

2.強みと弱みの明確化

SWOT分析という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。SWOTとは、強み・弱み・機会・脅威の英単語の頭文字を合わせたものです。通常、SWOT分析をしましょうというと各項目を羅列することで終わりますが、これでは十分な効果を得られません。これらをストーリーとして捉えることでこれからどうしたら良いのかがしっかりと見えてきます。

3.売上を上げる仕組み

誰に、何を、どのように販売することで売上を上げるのかはビジネスの一番の基本です。
対象が変われば商品も販売方法も変わります。商品が変われば対象も販売方法も変わります。販売方法が変われば対象も商品も変わります。おそらくこの商品サービスを販売するということは決めて創業していると思いますが、今一度すべてを見直し、他にも商品がないか、方法がないか、対象となる人がいないかを探してください。

4.具体性のある事業計画書

事業計画書は「計画書」です。作ったら終わりではなく、その期の間、ずっと向き合っていくものです。つまり、創業してこうしていくという計画をより具体的に作成し、実際にそれ実行し、その効果を見定めて見直していくためのものです。そのため、具体的にどう行動すればいいのかがわかるように記載します。

創業は不安かもしれません。
しかし、ヒアリングに答えていただきながら頭の整理をされる創業者もいらっしゃいます。
初めての方もお気軽にお声がけください。