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知的資産と無形資産、知的資本の違いは?

'20.01.18

知的資産と無形資産の違いは?

有形資産と無形資産というと、決算書に出てくる無形固定資産や無形流動資産のイメージをされるかもしれませんが、ここでいう無形資産というのは、知的財産権、知的財産、知的資産をすべて含んだ上で、これらに含まれない借地権や電話加入権などをも含む幅広い概念です。決算書の無形固定資産や無形流動資産には知的資産は含みませんので、用語の意味が少し異なります。

さて、知的資産と無形資産の違いですが、知的資産は無形資産の一部です。つまり、無形資産の方が知的資産よりも広い概念なのです。例えば電話加入権それ自体は目に見えない資産です。では電話加入権は知的資産なのでしょうか?無形資産なのでしょうか?電話加入権は無形資産です。昔、まだ携帯電話が普及する前は、電話加入権が1本7万円程度の価値がありました。現実にNTTから電話加入権を7万円程度で購入していましたし、自己破産する際は、電話加入権を書いとる業者がたくさんありました。このように電話加入権の所有者が自分の電話加入権を販売する際に、誰に販売してもほぼ変わらない金額で売ることができたものです。現在の現実を考えると、これもどうかという点はあるのですが、無形資産である電話加入権は企業が有する金銭的な価値として計上することができると考えられているのです。

他方で、知的資産、例えば、経営理念や企業風土などは売買することはできません。仮にある企業が理念としている言葉を売ったとしても、ある企業が他の企業の経営理念の言葉をそのまま自社の理念にしたとしても、その中にこめられた想いや、その理念を達成するための手段までは売買したり、真似したりすることができません。そして理念そのものは企業の決算書で金銭的な価値として計上されません。

また、例えば、知的財産権も電話加入権と同様に売買することはできますが、その評価は一定額とはいえません。ある企業が保有している特許権を他の企業へ売ると仮定します。その特許権をA社に販売した場合と、B社に販売した場合を想定してみましょう。その特許権は、A社にとっては非常に価値のある、高額でも購入したい権利であるとしても、B社にとっては無償でも必要ないとか活用できない権利であるということもあるのです。つまり、特許権に限らず、知的財産権を売買する際、知的財産権を購入する企業の事業内容、規模、既存の設備、人材、事業計画など様々な要素の違いによって、その知的財産権の価値が異なってくるのです。

上記をまとめると、目に見えにくい資産で金銭的な価値として計上しやすいものが無形資産、金銭的な価値として計上しにくいものが知的資産ということができます。しかし、現実には、知的資産と無形資産を同じ意味で使われていることも多いため、必ずしも上記のような意味で「知的資産」と「無形資産」という用語が使い分けられているとは限りません。

知的資産と知的資本の違いは?

知的資産は「intellectual assets」の訳語(経済産業省)です。これに対して、知的資本は「intellectual capital」の訳語(内田康彦・ヨーラン・ルース著「日本企業の知的資本マネジメント」)です。船橋仁編著「知的資本経営のすすめ」によると、知的資本とは、「本質的な会社の価値である根っこの部分に相当する価値」と書かれています。

これだけ見て、知的資産と知的資本の違いがわかるでしょうか?なかなか難しいと思います。

上記のほかにも、知的資本とは、企業の経営活動の過程で蓄積された潜在的な企業価値という意味で使われていたり、株式時価総額と簿価企業価値との差額部分という意味で使われていたりするのですが、これと「知的資産」の明確な区別は私にはできません。

おそらく、学者の先生方の中には、「知的資産」と「知的資本」をきちんと使い分けされている方もいらしゃるのだと思いますが、私が拝見した多くのサイト、文献、論文において、「知的資産」と「知的資本」を明確に使い分けされているものはありませんでした。そのため、私は知的資産と知的資本はほぼ同義であると解釈しています。