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知的資産の分類

'20.01.18

人的資産

人的資産とは、経営者や従業員1人1人が有している強みです。

経営者の役割は、会社の方向性を決定し、戦略や戦術を立て、従業員とともに遂行する組織を作っていくことです。そのためには、経営者の想い、ビジョン、資質、リーダーシップ、コミュニケーション能力などの人的資産が求められているとともに、企業内にはこうした人的資産が存在しています。

一方、従業員には自分のスキルを磨き、企業内で最大限に発揮することが求められます。しかし、各自が好き勝手に自分の強みを発揮していては、企業はバラバラになってしまいます。そこで従業員には、経営者の理念やビジョンを受け取り、その方向性に向かって他の従業員と協力していくコミュニケーション能力も必要となります。こうした従業員個々人の想い、ビジョン、スキル、ノウハウ、資質、業務遂行能力、コミュニケーション能力などの人的資産が企業内には存在しています。

こうした経営者や従業員各人が持っている人的資産は、その強みを有している個々人に帰属しています。そのため、経営者が交代したり、従業員が退職してしまったりしたら、企業からいなくなった個々人が有していた人的資産は企業からなくなってしまいます。これが人的資産の特徴です。

構造資産

構造資産とは、経営理念、データべース、システム、企業が管理しているノウハウ、マニュアルなどです。これらは特定の人に帰属していませんので、特定の従業員(経営者を含む)が企業からいなくなったとしても、起業に残る会社の強みです。これが構造資産の特徴です。

関係資産

関係資産は、人的資産、構造資産と少し異なります。人的資産と構造資産は企業内にある知的資産でしたが、関係資産は企業と外部との関係性に関する強みです。例えば、企業と顧客との関係、企業と取引先との関係、企業と金融機関との関係などです。つまり、企業の外部からの信頼性の評価といえるのではないでしょうか。

各知的資産の割合

知的資産は人的資産、構造資産、関係資産の3つに分類されますが、中小企業において、人的資産、構造資産、関係資産の割合はどの程度でしょうか?

たしかに中小企業といっても規模に大きな差がありますので一概にはいえませんが、一般的には、人的資産8割、構造資産1割、関係資産1割程度だといわれています。そして人的資産8割の大半が経営者に属すると言われています。この傾向は小規模事業者になればなるほど顕著です。

これは何を意味しているのでしょうか?

ちなみに、大手企業においては、人的資産1割、構造資産4割、関係資産5割程度だといわれていますが、もし、今、大手企業の経営者に何か緊急事態が起きたとしても、経営者のスケジュール変更や、代理出席者の手配などに手間取ることはあったとしても、そのことのみで企業が倒産する可能性は非常に低いです。

ところが、中小企業や小規模事業者において経営者に緊急事態が起こったら、即倒産するケースさえあるのです。なぜなら、すべての統率を経営者が行っているケースが多い上に、経営者の指示で業務遂行を行っているが故に、企業活動が停滞してしまう可能性があるからです。

中小企業や小規模事業者においては、人的資産が約8割と大きいため、リスク回避を考えていく必要があります。そのために何か良い方法はないのでしょうか?

人的資産の構造資産化とは

中小企業や小規模事業者は人的資産が8割程度を占めており、その大半が経営者の人的資産であるというお話をしました。企業の知的資産の8割が経営者を中心とする人的資産であるということは、経営者が交代したり、人的資産の中心人物となっている従業員が退職したりすると、企業活動が成り立たなくなる可能性を意味しています。

そこで、個々人が有している強みを企業に帰属する強みへ変換することができないか?という考えが出てきます。これを人的資産の構造資産化といいます。個々人に帰属する強みが企業に帰属する強みへと変換されると、人材が入れ替わっても強みが承継されているので強い企業を維持できるからです。

では、人的資産を構造資産化するためにはどのような方法があるのでしょうか?

例えばマニュアル化。従業員個々人のスキルやノウハウをまとめてマニュアル化することで、1人の強みが全員の強みとなります。

例えばデータベース化。従業員個々人の有している顧客データを企業全体でデータベース化することで、顧客対応をしやすくなります。

このように、従業員が退職しても企業内に強みが残る仕組みづくりをする過程で、従業員1人1人の存在価値の発見、尊重、評価などにも結びついていきます。こうした副次的な効果もある人的資産の構造資産化に是非取り組んでいただきたいと思います。