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知的資産経営報告書の活用方法

'20.01.18

知的資産の整理と知的資産経営報告書の作成・開示との違い

知的資産を整理することと、知的資産経営報告書を作成・開示とはどのように違うのでしょうか?

知的資産を整理することは、企業内にどのような人的資産・構造資産・関係資産があり、そのうちのどの知的資産と知的資産がどのように関連しているのかを認識することです。その際、財務諸表(決算書)の数値も参考にしながら、どの知的資産がどんな結果を生んでいるのか、どんな知的資産のおかげで商品サービスが提供できているのかも把握することが大切です。

この知的資産の整理は、企業の営業活動を振り返ることなのでどの企業も行う必要があります。

これに対して知的資産経営報告書は、開示目的と開示対象者に合わせて作成するものです。つまり、開示目的と開示対象者により、記載内容も記載方法も変わってきます。

例えば、融資目的で知的資産経営報告書を作成する場合、原価率も考慮して記載しますが、求人目的で作成する場合には原価率を入れません。しかし知的資産の整理の段階ではこの作業を行うこととなります。このように特に知的資産経営報告書の作成の場合は開示目的と開示対象者によって内容を変える必要があるので、慎重さが必要です。

知的資産経営報告書の活用方法(内部マネジメントツール)

知的資産経営報告書を活用する方法にはどのようなものがあるのでしょうか?これには主に内部マネジメントツールとしての活用方法と、外部コミュニケーションツールとしての活用方法とがあります。

まず、知的資産経営報告書の内部マネジメントツールとしての活用方法ですが、これは経営者の頭の整理、事業承継、従業員(幹部)との方向性の一致などです。

経営者は常に経営環境を分析し、チャンスを窺い、経営方針を決めたり経営戦略を練ったりしています。しかし、頭の中だけで考えていると、矛盾したことを考えていたり、堂々巡りになってしまったり、数値に根拠のない計画を立ててしまったりすることがあります。それは、経営者はどうしても目先の売上に目を向けがちだからです。

そこで冷静に会社の状況をつかむために、経営者の頭の整理をする必要があります。その1つの手段として知的資産経営報告書を作成することが有用です。

この場合の知的資産経営報告書の作成目的は、中長期の事業計画の策定、経営者の頭の整理、経営幹部との情報共有などになるでしょう。知的資産経営報告書をよむ対象者は、経営者、経営幹部、場合によっては従業員でしょうか。この目的や対象者に合わせて知的資産経営報告書を記載するのであれば、財務諸表の数字も含めて丁寧に分析し、各知的資産との関連性を見ていきます。

従業員1人1人のスキルやノウハウを評価する何かが見えてくるでしょう。

自社の強みの源泉を把握することができるでしょう。

同業他社との違い、同業他社にはない差別化の源泉が見えてくるでしょう。

逆に、自社の課題も見えてくるでしょう。

こうした良いこと、悪いことをすべて洗い出し、特に経営者と経営幹部でしっかりと認識し、方向性を決めていくことは決して悪いことではありません。内部マネジメントを目的とした知的資産経営報告書を作成することで、企業の強い基盤づくりに活用することができるのです。

知的資産経営報告書の活用方法(外部コミュニケーションツール)

企業は外部とのコミュニケーションツールとして、会社案内やホームページなどを使っています。

会社案内やホームページをやめて知的資産経営報告書を作って使わないといけないのか?というと、そんなことはありません!

会社案内やホームページは、不特定多数の人へ同じ情報を伝えるには非常に有益なツールです。特にホームページは海外の人も見ることができますので。

しかし、会社案内やホームページは、開示対象や開示目的によって分けることができない、という大きな弱点を持っています。

知的資産経営報告書は、「誰に」「何のために」「自社のどんな情報を」「どのような形で」開示しているかを分けて作成するのに対して、会社案内やホームページは画一の情報を提供するツールだからです。

知的資産経営報告書は、既存の会社案内やホームページを作成する時よりも細かいところまで分析を行いますし、論理的一貫性を徹底します。また、決算書の数字に出てこない知的資産とはいえ、その根拠や可能な限り数字にもこだわりますので、信憑性の高いものといえます。

では外部とのコミュニケーションにはどのような種類があるのでしょうか?
それは、求職者に向けたもの、金融機関へ向けたもの、株主や投資家に向けたもの、顧客に向けたもの、取引先に向けたものなどです。

このように開示目的と開示対象者に合わせて作成された知的資産経営報告書は、従来の会社案内やホームページとは異なり、特定の開示目的や開示対象者にとっては有益なコミュニケーションツールになります。