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知的資産経営報告書への記載事項

'20.01.18

企業概要

知的資産経営報告書の最初は、多くの場合、社長や代表の挨拶が書かれています。そして企業概要として例えばこんな内容を記載します。

1.会社名
2.所在地
3.連絡先
4.創業時期
5.資本金
6.従業員数
7.URL
8.経営理念・社是など

その後、会社の歴史を記載します。ここから徐々に会社案内とは異なり、深いものになっていきます。

創業理由、創業時の事業内容、工場建設の時期や理由、移転の時期や理由など、会社の歴史の1つ1つにスポットライトを浴びせていきます。外部環境の変化、当時の経営者の想いや考え、当時の経営者が思い描いた会社の方向性などを振り返りながら現在の企業の姿を見ることで、言葉にできないことまで見えてきます。

知的資産経営報告書を作成する目的が事業承継の場合、この部分の承継は非常に重要な意味を持ちます。反発していた現在の経営者や前代の経営者のすごさを感じたり、熱い思いを知ったり、大変だったことを知ったりすることで、後継者が言葉にしようとしまいと、後継者の心に響くことがあるからです。

商品サービス

知的資産経営報告書は商品サービスのカタログではないため、商品サービスの写真を並べるだけでは意味がありません。

どんな商品サービスがあるのかを記載するのは当然のこととして、その商品サービスが生まれた背景、生まれるまでの苦労、商品サービスの強み、他社との違いなどを記載して下さい。この時、商品サービスの製造、生産、検査、管理、発注から納品までに関わる従業員1人1人の強みや企業風土などにも目を向け、企業を支えている知的資産をたくさん見つけて下さい。

価値創造ストーリー

価値創造ストーリーこそが会社案内と一番異なる部分になります。価値創造の書き方は決まっていません。

例えば、人的資産、構造資産、関係資産という分類に沿って企業の知的資産を洗い出し、それぞれのつながり、関連性を示していく方法があります。この方法で知的資産を整理すると、人的資産の構造資産化ができていないものは何か?そもそも人的資産の構造資産化できるものなのか?できないものであればどうしていくと良いのかなどを考えるきっかけができます。

別の価値創造ストーリーの方法としては、経営理念から業績までの流れで見ていく方法があります。企業の流れとしては、経営理念や経営者の想いがあり、努力工夫が施され、それが企業の強みとなり、商品サービスとして提供され、その結果が業績という形で表れてきます。

これを逆から見ていく過程で価値創造ストーリー化していきます。つまり業績を構成している商品サービスの分解、各々の商品サービスの強みの分析、それを構築した努力や工夫、そしてそれらが理念につながっているか、という点を見ていくのです。この方法で価値創造ストーリーを見ていくと、会社全体にまたがる強みと課題が見えやすくなります。どうしてこの強みが構築されたんだろう?というものをあらゆる角度から見ていくからです。

この他にも色々な価値創造ストーリーがあると思います。どの方法が良い、悪いということはありません。

あくまでも知的資産経営報告書は何かの目的で、誰かに読んでもらいために作るものですから、その目的・対象者にとって一番わかりやすい方法で記載すればよいのです。広い視点で最適な価値創造ストーリーを記載して下さい。

現在の価値創造ストーリーが完成したら、それをベースに中長期の価値創造ストーリーを考えて記載して下さい。例えば3年後の自社の姿です。そのために必要な知的資産は何か?その知的資産を構築するためにどうするのか?そんな視点で将来の価値創造ストーリーを構築して下さい。

知的資産経営報告書作成の際の注意事項

知的資産経営報告書を作成する際に一番苦労するのは価値創造ストーリーです。

なぜ?を繰り返し問い続けるので、「面倒。もうやめたい」という心の声が聞こえてくることもしばしばです。

しかし、ここで適当にストーリーを作ることだけは絶対にやめて下さい。そうしたくなる気持ちは誰よりも一番わかりますが…

価値創造ストーリーがつながらないということは、何か知的資産が抜けているか、何か課題があるかなのです。これに気づくことこそが企業の発展のもとになります。是非諦めずに価値創造ストーリーと向き合って下さい。