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定量分析と定性分析

'19.10.23

定量分析とは?

定量分析とは、企業の財務諸表をもとに分析 のことで、財務分析と呼ばれることもあります。つまり、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)の数値を読んでいきます。

その際、企業の規模や成長ステージを考慮する必要があります。定量分析を効率的に行うために勘定科目に関して重要な視点は以下の3つです。

・数字の大きい勘定科目の変動を見ていくこと
・勘定科目の構成が前期や前々期と比較して大きく変わっているかいないかを見ていくこと
・前期や前々期の財務諸表の勘定科目と異なるものが発生している時、その原因を見ていくこと

このほか、売掛金が多いのに買掛金が少ない場合、つまり販売した商品サービスのお金が入ってくるのは数か月後なのに、その商品サービスを提供するための仕入れや外注費の支払いが当月の場合は黒字倒産の危険もあるため要注意です。

また、いくつかの経営分析の手法も参考になります。経営分析とは、自分の会社の状況を冷静に見つめなおす作業です。経営活動の結果としての財務諸表の数値を収益性、成長性、生産性、安定性の指標でとらえ、その数値が出てきた背景や原因を考えていく必要があります。

・収益性の分析(会社の収益力)…主に損益計算書から利益の獲得状況を判断します
・成長性の分析(会社の成長力)…売上や利益の推移から、企業の将来の成長性を判断します
・生産性の分析(会社の生産力)…生産の投入と産出高との関係を見ることで企業の経営能率を判断します
・安定性の分析(経営の安全力)…過去のフローの結果としてのストックの健全性を判断します

経営分析は経営改善に役立てるために行いますが、今は経営状態が良くても、悪くなりような問題が見えたら、経営状態が良いうちに解決策を見出していくことが大切です。悪くなってしまったら資金調達も難しくなりますし、問題解決のための投資も行いづらくなるからです。

また、経営分析の結果を単に平均値と比較して捉えるだけでなく、現状と一致している数値か、現状とずれている数値かをきちんと判断し、現状と一致して良いならその部分をさらに伸ばすこと、悪いなら問題を解決することを考え、現状とずれているのであれば、ずれの原因と対策を考えていく必要があります。

定性分析とは?

定性分析とは、企業の財務諸表には表れてこない特徴を分析することです。定性分析は、数値で表しにくい情報のため、多面的で柔軟性のある分析を行うことができます。人材、理念、ネットワーク、技術力などといった知的資産が定性分析の対象となります。しかし、定性分析は主観的になってしまう側面もあるため、客観性に欠けると指摘されることもあります。そのため、いかに論理的に示すかということが重要になります。
定性分析には下記のものがあります。

1.企業内に属するもの

・経営者の資質、リーダーシップ、経営経験、経営戦略など
・従業員のキャリア、ノウハウ、技術力など
・企業の組織力、データベース、企業風土など
・企業の沿革、社歴など

2.企業外に属するもの

・市場環境、競合他社の動向、参入障壁、業界動向など
・金融機関との関係性、取引先との関係性など
小規模事業者になればなるほど、経営者の資質やリーダーシップ、経営者のもつネットワーク力などの占める割合が大きくなります。定性分析は客観的なデータを活用できるものが少ないことから、経営者や従業員に対してヒアリングを行って把握していきますが、経営者のヒアリング結果と従業員のヒアリング結果が必ず一致するものではない点に注意する必要があります。
例えば、経営者は社内のコミュニケーションがよく取れていると判断しているにも関わらず、従業員の一部はそのように感じていないというケースがあります。また、経営者は従業員の能力をそこまで高く評価していないにもかかわらず、顧客からの評判が良い原因や顧客がリピーターになる原因はそこにあるというケースもあります。
このように、定性分析は主観がかなり入ってくる場面もありますので、多角的にヒアリングを行い、客観的に評価するように努力しなければなりません。定性分析の方法には、VRIO分析、アンゾフの成長分析、PPM分析、バリューチェーン分析、4P分析、SWOT分析、PEST分析など様々な分析手法がありますので、複数の分析手法をうまく組み合わせて活用することが求められます。